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時代物パロ!(和風)
昔々の事件簿





数刻前までシンと静まりかえっていた大内裏が騒然としていた。
「賊だ!!少納言様が闇討ちにあわれた!」
「探せ!外に出ていないはずだ!」
それらの音を遠くに聞いていると、筒の中で矢と矢をぶつけながら一人が自分のいる方に近づいてくることに気がついた。わざと衣ずれの音を立ててあたかも今起き上ったかのように錯覚させる。
「何事だ」
「はっ。おやすみのところ申し訳ありません。実は内裏に賊が侵入したとのことです。少納言何某様が暗殺されました」
半蔀(ハジトミ)の向こうから部下の声が聞こえた。
「こちらに怪しげな者が来なかったでしょうか?」
「ない。他に行け」
「はっ」
部下が完全に下がり、部屋は再び静かになった。下を見れば一人の男。
「いいか、今から手を離すが、絶対に大声を出すな。お前捕まりたくないだろう?」
男がうなずくのを確認する。そこでやっと俺は男の口を押さえつけていた左手を外した。しかしまだ右手で持った太刀は喉元に突きつけているため、その気になれば一瞬で殺せる。
「で、お前、なんで何某を殺した」
馬乗りになった状態のまま男の話を聞く。男はキッと眉を上げる。まだ元服を迎えたばかりのような高い声が仲間の仕返しをしただけだと叫ぶ。
「アイツ、京の街で俺の仲間のことバカにしやがったんだ!それと、俺は殺してねェ!!」
「大声を出すなと言っただろうが」
「あ、ゴメン」
コイツ、頭悪そうだな。
「お前平民なのによく貴族に手を出したな。普通、泣き寝入りするところだろう」
「なんで泣き寝入りしなきゃいけねーんだよ。おかしいだろ」
まっすぐな目でそう言い返してきたことに俺はため息をつくと男の上から退く。
「?いいのか?俺を捕まえなくても」
「俺は何某が嫌いだからな、それにお前が言ってることが本当なら、悪いのはあっちなんだろ?」
「しししっ!おめェいいやつだな。ありがとう!」
能天気な男を呆れ半分で見る。こんな馬鹿に内裏まで入られるなんて見張りは何をしていたのか。
「しかし、お前が殺していないと言っても実際に何某は暗殺されている」
「でも、俺は殺してねェ!!」
「うるさい。お前が嘘ついてるなんて疑っちゃいねえよ。ただな、真犯人が分かってない今、お前は捕まり次第弁明なく殺されたって文句は言えねえ立場だってわかるか?」
まだ年若い男は唸る。やっと、ことの重大性が分かったらしい。
「えぇ〜。じゃあ俺はどうすればいいんだよ」
「真犯人が出るまでどこかに隠れているんだな」
「そんなのいつになるか分かんねーじゃん!俺が捕まえに行ってやる」
「お前が動いたら余計面倒なことになるだろうが」
ガン!と刀の鞘で今にも飛びだしそうな男の頭を殴る。
「いってェ〜〜!!」
「・・・しかし、まあその考え悪くないな」
「は?」
「お前、相当身軽だったな」
「ああ!鍛えてるからな!」
あれだけの追手をかわし、内裏から離れたこの屋敷に来たこと。取り押さえるのに俺自身苦労したこと。二つのことを思い出した上での問いだったが、答えは予想通りだった。
「お前、俺についてろ。犯人をあぶりだすぞ」








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