NOVEL  >>  Short story  >> 

とある外出




軍に所属する者が基地外に出る理由は大きく分けて2つある。私情か仕事のどちらかだ。前者の場合は特に手続きなんてものは必要ない。出入りの際に身分証明書である隊員証を提示しさえすればよい。ただし、有事があった場合呼び戻される可能性は高い。遊びに行っているくらいならすぐに戻ってこいということだろう。後者の場合は少し手間がかかる。どういった理由で基地を留守にするのか、どれくらいの期間を留守にするのか。細かい内容を外出する前にキチンと書類として上に提出しなくてはいけない。それが一般兵なら。
「ところがだ。自分の所属している陸海空軍において基地内にその階級よりも上階級がいない場合、ソイツはその書類を上に提出しなくていい。というより上がいないから出来ない」
「ふむふむ。なるほど」
「そこで話を軍医の方に持っていくぞ」
「グンイだな。グンイ」
コイツ絶対に半分以上理解してないな。
「軍医は軍の中でも技官として別の地位が与えられている。その中での最高階級は少将だ」
つまり。
「俺はいついかなる時であれ、その書類を提出しなくていいということだ」
「すげーなローは!じゃあズル休みし放題ってことか?」
そう。確かに理論上はそうなる。そこまで階級を上げれば楽になると俺も思っていた。しかし現実はそこまで甘くない。俺は深くため息をつく。
「違うのか?」
「ああ、違った」
じゃなきゃこんなに仕事なんてしていないと全身を使って訴える。
「技官って言うのは特別な資格、または技量を持った奴らがなるもんだ。絶対数が他の軍に比べると格段に少ない。しかも上にいるヤツほど腕がいいというのもまた必然。天辺にいるソイツにしかできないことがあることも珍しくない。言い換えれば、替えが効かないってことは分かるよな?」
「・・・えー!!じゃあ俺はかえることができんのか!?」
「今、お前の中の『かえる』って言うのは人が変貌するとか、もう一人全く自分と同じ奴がいてソイツと交換するってことになっているような気がするんだが、それは違うからな」
「ん?違うのか?」
「違うに決まってるだろうが。馬鹿か」
「む。バカって言うヤツがバカなんだぞ」
「言ってろ。あー、話がずれたな。ここで言う『替えることができない』は同じ仕事ができるヤツがいないってことだ」
「そういうことか!最初っからそう言えよ!分かりずれーな」
「そうだな。お前の理解力を買い被っていた俺が悪かった」
「分かればいいって。ん?なんかバカにされたような」
「気のせいじゃないか?」
「そっかー?」
首を傾げる麦わら屋を適当に相手しながら中断していた仕事を再開する。全く、こいつが来ると仕事が進まねえ。
「なあ」
馬鹿にされたのか否かについて考え込むとばかりに思っていた男が唐突に話を切り出す。
「ローは自由に外に出れるんだよな?」
「まあ、軍法上はな」
「じゃあ、俺も外に出させてくれよ!」
「は?」
「ローばっかりズリーじゃねーか!俺も外に行きてー!!」
コイツの思考回路は謎だ。さっきの話をまるで理解してない。
「だから言ってるだろう。俺は暇じゃねえ。ましてやお前を基地外に出すなんて権限、軍医の俺が・・・」
待てよ。確か、コイツの階級は少佐だから・・・。
「ロー?」
「いいぜ。出してやる」



「やった〜!!出たぞ〜!!!」
「うるせえ。黙れ」
軍用バイクに乗った俺はヘルメットについているアイシールド越しに並走している男を見る。外に出るだけでこんなに喜ぶなんて、幸の薄いヤツ。軍服越しに感じる大気の存在感に自分も気分が高揚してることなんて棚にあげて、そんな失礼なことを思う。ヘルメットなんて邪魔なものを脱いでしまえば頬に風を感じて気持ちいいだろうな。

先に説明したとおり、俺が外に出るのに私情だろうと仕事だろうと書類の提出はない。周りに言っておけば言いだけだ。だから、どこに行くかとか時間の制限とか気にしなくていい。その上、仕事だと言えば自分より下の階級の兵士を護衛として連れていくのは自由である。今回利用したのはその点だ。

「で、責任感の強い俺がズル休みしてまで外に出してやったからには、それなりに面白いところに案内してくれるんだよな?」
「ああ!いいぞ!!」
「へえ」
そこまで自信ありげに言われると期待するぞ?
「とりあえず市街地まで競争しようぜ!」
「・・・てめえ、この格好で飛ばしたら『兵隊が暴走してます』って通報されてあっという間に懲罰部屋行きだぜ?」
「まあな」
「まあな、って・・・」
「だからさ」
麦わら屋の口が不敵な笑みを浮かべるのを目端に確認した。
「民間人が通らない道を行きゃあいいじゃん」
その瞬間、麦わら屋が乗ったバイクがうなり声を上げる。大型である軍用バイクの前輪を持ち上げるなんて誰でもできるもんじゃねえ。
「ローはどこまで俺についてこれるんだ?」
そう言うと碌に舗装されていない道に突っ込む。あのスピードでメーターが振り切れないのは流石軍用といったところだ。
「バギーですらこの道は危ねえだろう」
だが。
「あんなふうに煽られちゃあ、ノらないっていうのは気に食わねえ」
自分の足を軸にして後輪を滑らせて、麦わら屋が走って行った方向へまっすぐに車体を向ける。付き合ってやるぜ。




「フィニッシュまでな」








<< END >>

すみません。バイク、分かんないです。誰か資料クレ!!


NOVEL  >>  Short story  >> 

とある外出Copyright © 2009 帰るミチ all rights reserved.