02よろしく
幸村を施設で見つけて早2週間。後見人になる手続きがやっとおわった。もちろん俺の手元で育てられるようにした。親父のことなんか知るか。とにかく幸村は俺が面倒を見るようになったのだ。
この2週間を自分は浮ついた気持ちで過ごしたように思える。自分のマンションの一室に彼が必要とするだろう物を買い揃え、仕事のスケジュールを調整して毎日あの子に会いに行けるようにもした。その甲斐あってか、幸村も少し変った。初めて会った時、幸村は自分の名前を言ったきり何も話さなかったが、今は小さく挨拶をしてくれるまでになった。すごい進歩だと思う。他にも以前は警戒心むき出しだった視線も角が取れたように感じる。自分が持ってくる物や行動に興味を示すようにもなった。
「こんにちは、幸村」
「こんにちは・・・」
大きな目で、じっと自分を見つめてくる。睨むとかそんなんじゃなくて、真剣に人の話を聴こうとするこの子なりのスタイルなんだっていうことも、この2週間で知った。
「前から話してた通り、今日から幸村は俺んちの子供だよ。よろしくね」
差し出した手を幸村は見て、俺の顔をまた見て、そして手を重ねた。手を握る時、彼はそうする。不安がぬぐいきれないのか最初は触れるだけ。そして手を握られて、初めて握る。ぎゅっと音がしそうなほど。外の世界を知らない子供。行かないでと親に言えず、独りの世界で長い時間を過ごした子供。この子が何のためらいもなく、手を握れる存在になりたい。無条件で信頼し、安心する人になりたい。
俺は幸村の手をさらに強く握った。
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