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01出会い

「なんで俺様、こんなことやってるんかねー」
見渡す限りの子供子供、また子供。
大して子供が好きじゃない俺がここにいる理由は単純明快。義兄弟探し。




始まりは朝の一本の電話。
「佐助。お前、弟か妹がほしくないか?」
「は?」
朝から何の電話かと思ったら実の親からで、挨拶も無しにこの一言。対応しろって方が無理だろ。
「そうかそうか、ほしいか」
「いや、ちょっと、待っ」
「さっきテレビを見ていて、親がいない子供の里親になってもいいなと思ったんだが、」
聞いちゃいねー。しかもテレビに感化されるなんて、どんだけ単細胞なんだよ。
これで一企業の社長が務まるってんだから、世の中って不思議だよな。
「お前に断りもなく兄弟を増やすのはいかんと、電話したんだが、よかったよかった」
「だから意味分か」
「というわけで、自分で弟か妹を探して来い!孤児院の方にアポとったら住所を送る。じゃあまたな」
ツー。ツー。ツー。
「・・・マジで?」




という過程を経て、今俺は孤児院にいる。
溜息の一つや二つは許されるだろうが、罪のない職員の人たちの前で下手に不安をあおるようなことはしない。
人好きするような笑顔を貼り付けて適当に相槌を打っておけば、他人は安心するもんだ。
(とは、いうものの)
周りをざっと見渡して途方に暮れる。どんな子がいいのか、さっぱりわからない。
不本意ではあるが自分の兄弟になるのだし、やはりここは可愛い妹がいいだろうか。
(それじゃあ変態だろ)
自分に苦笑。
「ここは元気な子、静かな子、優しい子、泣き虫な子など、たくさんの子供がいますが、みんないい子ですよー。どの子もきっと良い家族になれます」
「そうですか」
子供達を見つめる院長に和やかに返事を返す。施設内を回りながらの義兄弟選び。子供自身の簡単な情報とともに、あの子はどうか、この子はどうかと薦められることに少々飽きがきていた。
(たりーな。どうせ面倒みるのは親父だろうし、ちゃちゃっと決めて帰りますかね)
丁度訪れた部屋をざっと見渡す。小・中学生くらいの子供達が思い思いに動き回っていた。が、1人だけ身動き一つしないのに気がついた。
「あの子は?」
部屋の隅でぎゅっと小さくなって他の子供達を眺めている子。それを見とめた今まで朗らかに喋っていた院長の顔に陰りが生じた。
「彼は・・・」




「こんにちは」
大きな窓のカーテンの陰に隠れるように、壁を背にして彼は座りこんでいた。先ほどの院長の言葉が思い出される。
『社会的に存在していなかった子、と言いますか、生まれてきたとき戸籍に登録されなかったのでしょう。要はあの子に関することがどこを探しても全く無かったんです』
『全く無かった?』
『はい。たぶん母親は独りで産んで、誰にも会わさず育てたのだと思われます。彼の母親が事故で亡くなって、親戚の方が遺品を整理に住んでいた家に入るまで、誰も彼に気づいていなかったそうです』
服が余っている細い身体から発せられる気配はとても薄い。
『ここに来た時もひどい状態でしたが、発見された時は生きているのがやっと、といった状態だったそうです。極度の栄養失調、全身に拡がる虐待の傷、傷による発熱。すぐに病院に運ばれ大事には至らなかったそうですが、あと一週間でも発見が遅れていたらと思うとぞっとします』
しゃがみこみ、目をのぞきこむ。薄い茶色の双眸に自分が映った。
「俺は佐助。猿飛佐助。君は?」
『やさしい・・・、やさしい子なんです。だから、あの子を引き取るというなら、どうか幸せを教えてあげてください』
わずかな隙間からこぼれおちる声は
「・・・幸村」
思っていた以上に澄んでいた。












<< END >>
こうして始まる源氏物語・佐幸バージョン(笑)一目惚れとはいえ、これじゃあ人さらいだよ(爆)
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