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*ちょっと暗いです!黒幸です!注意!!


大丈夫だよって人だけどうぞ




朱に交われば赤く




ひらひらと飛ぶ姿が目に入った

進む先には細い糸

あっと思った時にはもう

蝶は空に縫いとめられていた



朱に交われば赤く



「どうしたの?」
「佐助」
廊下の向こう側から歩いてきた彼は、幸村の見遣っていた先を見てわずかに眉をひそめた・・・ように幸村は感じた。
「朝の鍛練お疲れ様」
しかしそれは一瞬の出来事。いつもどおりの表情で佐助は言う。
「朝餉はもう準備してあるから、早く着替えておいでよ」
「あい、分かった」
細かく震える羽根から視線を外して自室へ向かう。


赤は自分がたぎる色であり、あれを見ると自分でない何かに変わるのを遠くに感じる。
自分の手から生まれる炎はもちろん、戦場で散る、生きていた証の赤は常にないほど自分を煽る。昔から変わらず、その感覚は好きだ。
自分が纏うその興奮を誰かと分け合いたいと思った。身近ににあって、親しくなりたい、親しくありたいと思ったその相手にこの高揚を。

どうやったらそうなるか、自分なりに真面目に考え。

そして赤をよく身につけるようになった。

自分が身にまとう赤。
自分が生み出す赤。

人は赤を見る度に自分を喚起するだろう。そして、自分と同じように赤という呪縛に飲まれて、自分と同じように興奮に身を任せるようになればいい。

そうすれば自分に最も近い者になるに違いない。


角を曲がった際に目端にとらえた蜘蛛の巣に赤色は無く、細い糸がちぎれて風に揺らめいていた。それどころか蜘蛛はクナイで以って後ろにあった木に打ちつけられている。そして、再び自由に飛ぶ赤を見て薄く微笑む忍びの姿がそこにはあった。
赤を見ると興奮というよりも執着を見せるようになった忍び。
「ちと、やり過ぎたか」
幸村は苦笑して自室へと向かって行った。







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